知識の「体系化」とフィールドの重要性

前回書いた「知識」を得ることについての続き.

どうやって知識を獲得できるのか,について同じく「学びとは何か(著:今井むつみ)」からもうひとつ.

 

まずは自分の話から.

自分は日頃読む本や,分野の異なる授業などをとる一方で,

なかなかそれらで学んだことを生かせないのが勿体無いと感じていた.

例えば,

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空間感覚には「相対位置」と「絶対位置」なるものがあって,ある地域にはモノを示す時に,「Aさんの左にあるコップ」ではなく,「Aさんの東にあるコップ」という「絶対方位」で表現する部族がいる.

またその民族は常に「絶対位置」を使って表現するために,「相対方位」を使って空間を切りとる人よりも,方向感覚(自分が向いている場所は東なのか?北なのか?)を保持している.

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という「知識」がある.

でもこれの知識について,なんか面白い!と思うんだけど,すぐに何かに使えるというのが思いつくわけでもない.

 

他にも,デザイナーが考える「ふつう」をデザインする意味やA-Lifeのような人工生命モデルなど,なんでかは分かんないけどなんか面白そう.とは思う.

そんなエッセンスを毎日得たりするんだけど,

時間が経てばだんだん薄れていって,忘れて,いつのまにか自分の中から消えていたということもある.それがなんだか勿体なかった.

 

どうやったらこの「面白さ」を保持できるのか?これらの「知識」を自分のものにできないか?

 

その方法論について,「学びとは何か(著:今井むつみ)」の一部分を引用.

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「生きた知識」と「死んだ知識」

認知心理学で知識について語るとき,「生きた知識」と「死んだ知識」という言い方をよくする.私たちの誰もが,遅くとも中学校から英語を学び,英語の知識を入試やTOEICなどのテストで試されてきた.(今井むつみ,「学びとは何かー<探究人>になるために」,p32)

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とし,

私たちは英語の不定冠詞の「a」と,定冠詞の「the」の違いは説明できるかもしれないが,実際に書いたり話したりするときにこれらを正しく使い分けられているのだろうか?

と投げかけている.

またその逆の例として,

日本語の助詞である「て」「に」「を」「は」について使い分けを説明するのは難しいが,日本語の母語話者はこれらを正しく使い分けられる.

と述べている.その理由として,

子どものときからずっと日常的に使用することで「て」「に」「を」「は」の使い方を体に覚えさせ,意識しなくても使い分けができるようになった.

ことを挙げている.

その後,知識とはなにかについての深掘りが続き,

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(て」「に」「を」「は」の使い分けの話から)

つまり,その知識が体の一部となるのだ.知識はこのように体の一部になってこそ生きて使えるようになる,

(外国語習得の例から)

つまり,「頭で知っているだけの知識」は「使えない知識」,「体で覚えた知識」は「使える知識」と深く関わっていることがわかる.

(中略)

せっかく時間をかけて学ぶのなら,学んだ知識を「生きた知識」にしたい.ではどのように学べば,知識は「生きた知識」になるのだろうか.

「生きた知識」の分かりやすい例は,言語(母国語)の知識だ.子どもは母国語を習得し使えるようになるために,ことばを覚える.覚えたことばを,コミュニケーションのために使う.また,覚えたことば,さらに新しいことばを覚えるためにも使う.つまり,持っている知識が新しい知識を生むサイクルをつくっているのである.

(今井むつみ,「学びとは何かー<探究人>になるために」,p32-35)

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つまり,

「生きた知識(使える知識)」にするためには知識を体系化する必要がある.

また獲得した知識を使い,それを実践することで新しい「知識」を生むことができる.

 

ここで自分の話に戻るが,自分は,いわば知識を「体系化」したかったのかもしれない.そういう意味では例に挙げた「絶対位置」の話は,まだ知識になっておらず,記憶である.

 

知識の体系化にはなにが必要?どうやったら知識のサイクルを作れる?

それには知識を実践するための場(フィールド)が必要なのかもしれない.

フィールドを通して知識を使い,その場での相互作用から知識を体得し,また新しい知識を積み上げていけるのかもしれない.言語の習得が他社とのコミュニケーションで学ばれていくように.

 

ものづくり,始めますか.